「あの中途の人、ちょっと扱いづらいんだよね」
こういう言葉を、受け入れる側から聞いたことがあります。言われている本人は、たいてい気づいていません。
先に結論を書きます。扱いづらいと言われるのは、能力の問題ではありません。前職のやり方が見えすぎているだけです。
僕はIT業界に20年以上いたあと、40代・未経験でコンサル業界に入りました。扱われる側として経験し、その後は受け入れる側にもなりました。両方から見て分かったことを書きます。
「扱いづらい」の正体は、遠慮のなさではない
まず誤解を解いておきます。
扱いづらいと言われる人は、態度が悪いわけではありません。むしろ真面目で、成果を出そうとしている人が多いです。
では何が起きているのか。
- *前職の基準で、無自覚に発言しているんです。**
「前の会社ではこうしていました」「これ、普通はこうやりますよね」
本人は改善提案のつもりです。実際、内容が正しいことも多い。ですが受け取る側には、現状を否定されたように聞こえます。
しかも中途入社直後は、なぜ今のやり方になっているかの経緯を知りません。過去に失敗して今の形に落ち着いた、という背景がある場合もある。それを知らずに「普通は」と言うと、経緯ごと否定した形になります。
受け入れる側が本当に困っていること
受け入れ側の立場で見ると、困るのは意見の中身ではありませんでした。
- *その人が何をどこまでできるか、分からないことです。**
新卒なら「何もできない」という前提が共有されています。中途は違う。経歴書には立派なことが書いてあるけれど、この会社の文脈で何ができるかは未知数です。
だから仕事を振りにくい。振りにくいから任せられない。任せられないから実績が出ない。「使えない」という評価は、たいていこの循環の結果です。
能力が足りないのではなく、測れていないんですよね。
言われる側にできることは、実はシンプル
僕が40代・未経験でコンサルに入ったとき、初日の会議で一言も話せませんでした(そのときの話)。
知識がないので発言できない。発言しないので存在が見えない。見えないので仕事が来ない。まさに上の循環に入っていました。
そこから抜けるためにやったのは、大きなことではありません。
1. 「前の会社では」を封印する
同じ内容でも、言い方を変えるだけで受け取られ方が変わります。
- *「前職ではこうでした」 ではなく 「これは、どういう経緯で今の形になったんですか」**
質問の形にすると、経緯が聞けます。経緯を聞いてから提案すれば、否定ではなく上積みになります。遠回りに見えて、これが一番速い。
2. 何をやっているかを、こまめに見せる
「測れない」が問題なら、測れるようにすればいい。
僕は日報を、頼まれていない相手に送っていました。やったこと、詰まっていること、分かったこと。これだけです(日報の書き方)。
そうすると「この人はこういう人だ」という像が相手にできます。像ができると、仕事が振られ始めます。
- *扱いづらいの反対は、扱いやすいではありません。「見えている」です。**
3. 最初の成果は、小さくていい
大きな提案で存在感を出そうとすると、たいてい前職の話になります。
そうではなく、小さくてもこの会社の中で完結した成果を1つ作る。それが1つあると、次から発言の重みが変わります。
受け入れる側にできること
逆側にも書いておきます。
- *評価を保留する期間を、明示的に決めることです。**
「最初の3ヶ月は成果を求めない。代わりに、経緯と人間関係を覚えてほしい」
これを言葉にして渡すだけで、中途側の焦りがかなり消えます。焦りが消えると「前職では」が減ります。
そして小さな裁量を早めに渡すこと。 測れないなら、測れる場を作るしかありません。何も任せずに「様子を見る」と、いつまでも測れないままです。
まとめ
「扱いづらい」は能力評価ではなく、前職の基準が見えていることへの反応。
受け入れ側が本当に困っているのは、何ができるか測れないこと。
言われる側は「前職では」を質問に変え、日々を見せ、小さな成果を1つ作る。
受け入れ側は評価の保留期間を明示し、測れる場を早めに渡す。
中途採用が本当に使えないのかについては「40代中途採用は使えない」は本当かにも書きました。
あなたが「扱いづらい」と感じている相手は、本当に扱いづらいですか。それとも、まだ何ができるか見えていないだけですか。

